あっちの人のネタ的な何か |
オリトレ・ポケ擬のもうかたっぽ。 LG・FR2・HG(心太)・パール・ルビー・緑のあの人たちのネタ置き場。 たまにナオヤが遊びに来る。 |
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自分でもいつ書いたのかわからないものの救済です。
やこ→六の六界視点・・・と言ってもいいのだろうか・・・。
抜けるような白。それ以外の色はそこにはなかった。
降り積もった雪。或いは、雑じり気のない雲。塗り込められたのとは違い、透明がひたすらに重なって可視の白になっている。そういった空虚が見渡す限り上も下もなく八方何処までも広がって、六界は眉を顰めた。
ただ一人きり、ぽつりと立つ己以外に此処には何もない。見る限りそうだった。一点の影も、形も、踏みしめる足の感触はあるのにあまつさえ地平線さえも。白に浮かぶ己の輪郭だけがいっそ異質だった。
留まっていても仕方がないので、仕方なく歩き出す。
白は何処までも白で、その景色が変わる気配はまるでない。不思議とうんざりすることはなかった。懐かしい気さえする。雪国の生まれでもなくこれほどまでに広がる白を見たこともないのに、何故だろうか。
見回すほどに何もない。
疑問を抱えながらも足を動かしていくと、いつの間にか階段になっていた。見えない中で感触だけがさほど高くないそれを刻む。苦ではない。寧ろ、こちらに合わせてくるような。
それから暫く、その感覚が続いた。直線からやがて螺旋状になる。どれだけ登ったのだろう。どれだけ進んだのだろう。座標も何もなければ、知覚は難しかった。
足を止めて、腕を伸ばすと壁があった。行き止まりかとそのまま掌を伝わせると、抜ける感触。
窓だ。ぽっかりと、切り取られたようなアーチ型がある。真っ白にただ広がる空間が、その先に広がっているだけだ。少なくとも、この空間というものを捉える上で、そうであって然るべきだった。
思わず欄干から乗り出す。遠くに何かが見える。透明なものが集って凝縮されて、何かが形作られていく。
それはやがて、人の形に似ていた。空間は依然、真っ白なままだ。だが、六界には何故か分かってしまった。それが、丸みを帯びた少女の影であること。そして、それが己のよく知る人物のものであること。
細い体。いつの間に長くなった髪が、風もないのに靡いている。
――やこ?
紡いだはずの声が、本当に音になったのかはわからない。
それよりも早く、瓦解していく足場に気を取られてしまった。投げ出されるように落ちていく己の体。底も知れない白い空間に、重みがなくなったようにふわりと。墜落。
――やこ
六界はもう一度その名を呼んだ。やこはいつの間にか先程まで六界が居た場所に立ち尽くしていて、彼を見下ろす。一瞬だけ、その表情が切なげに歪んだように見えた。
六界が暗闇の中で目を覚ましたのは、その時点である。
「六界さん、なんか疲れてる・・・?」
覗き込まれた相手は張本人。やこは、小鳥がするように見開いた目のまま小首を傾げた。
「・・・別に。そういうわけじゃない」
「・・・そっか」
多分見透かされているであろう、それでもやこはそれ以上の追求しなかった。
あれから――あの夢から覚めた後、空が白んでも寝付けなかったのである。
理由なんて分かりきっている。しかし、それをやこ自身に告げられるはずもなく。
出さねばなるまいと思い続けていた答えが、そこにあった。何処までも続く白。空白。あるものが何も見えない自分。見えないのか、本当に何もないのか。それさえも分かりかねる自分。
それが六界にとっての灰田やこという人間がどういう意味を持つのか――否、自分が彼女に寄せる感情が、彼女の求めているものに成り得るのかどうか。
「・・・複雑怪奇、だな」
「え?」
「・・・なんでもない」
「・・・うん」
堂々巡りを続ける空白に、空の色だけが抜けるような濃い青をしていたのが妙に腹立たしかった。