あっちの人のネタ的な何か |
オリトレ・ポケ擬のもうかたっぽ。 LG・FR2・HG(心太)・パール・ルビー・緑のあの人たちのネタ置き場。 たまにナオヤが遊びに来る。 |
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
『やってみなきゃ、わかんないじゃん』
それが、アイツの口癖だ。
アイツはいつだってそう言う。
前に登れない岩山がある時も、眼前に広がるのが途方もない道程だって時も。
無茶言ってるんじゃねえよ、と俺は思うわけだ。
だって、それ実際にやるのは全部俺らだろ。
高く積み上げられた岩を崩すのはあれで結構骨が折れたし、途方もない道程は、次の町に着くまで一週間かかった。しまいにゃ道じゃなくて海に至ってもそのまままっすぐ、なんて言うもんだからほとほと呆れた。
なあ、どうしてそこまで俺らの信じられるんだよ。
やって出来た?そんなの結果論でしかねぇ。
『やってみなきゃわかんないじゃん。いや、絶対できる!』
アイツは今日もそんなわけのわからない熱弁と拳を振るう。
そして俺は・・・今日も今日とて頭を抱える。
「ハヤ、ここにいたのね」
「・・・なんだ、リノかよ」
瞑っていた目を開けると、覗き込んでいるリノがいた。
ふらっといなくなった俺をリノが探しに来るのは、いつものことだから別に驚きはしない。
まあ・・・もうちょっと後に来て欲しかったってのはあるけど。
「なんだ、ってことないじゃない。本当はフミちゃんに来て欲しかったからって」
「な!?べ、別にそんなんじゃねえしっ」
寝転がっていた草原から飛び起きた。照れているとか、本当にそんなんじゃない。というか、正直なところ一番会いたくない奴だ。
かれこれ一時間も前の話。フミと盛大な口喧嘩をした。結局俺が折れる形になって収まりはついたけれど、それで気が静まるかどうかは全く別の問題で。
それで、なんとなく気まずくなって抜け出した。それが、至って単純な事の次第。
「・・・なあ、リノ」
「なぁに?」
「・・・なんでフミって、あそこまで俺らのこと信じられるのかな」
それが、喧嘩の発端だ。
俺なんて、できるなんて思ってもいないのに。いっつもそうだ。
アイツは基本的に無茶振りで、俺らは必死で。そのぎりぎりのライン。
俺らに出来なかったらどうする?
がっかりするか?失望するか?――俺は、それが一番怖い。
「ハヤってば、わかってる癖に」
「ああ?どういう意味だよリノ」
リノは、凄く綺麗な笑顔で笑った。沈む俺の周りの空気とは正反対の、凄く晴れやかなの。
でも、俺にはその「わかってる」ことがわからなかった。
「ねぇ、ハヤ。何も難しく考えることじゃないわ。すっごく簡単なことなの」
リノが、続ける。
「フミちゃんってどこまでもまっすぐでしょう」
「まあ、そうだな」
フミは、とにかく真っ直ぐだ。頭に馬鹿がつくほどの。馬鹿正直で、変なところだけ馬鹿まじめで、馬鹿に真っ直ぐ。
植物なら、麦かあすなろみたいな奴だと、常々思う。
「フミちゃんができるって言う時、それを微塵も疑わないわ。私たちが、できるって信じてなくても」
俺も、そうだ・・・。俺はそこまで自分を信じてない。高く買い被った後に、痛い目見たくないから。いや、怖いから。理由なんて、認めたくなくても、幾らでもあるけど。
俺や、リノだけじゃない。テツも、ナホも、エンも、トニも――きっとみんなそうだ。
自分をそこまで信じられる奴なんて、そういない。大抵は信じてるふりをしている奴で、あとは、タカを括ってる自惚れ屋と――。
「言うなれば、フミちゃんは震源地なのよ。フミちゃんができるって言ってくれなきゃ、私たちはきっと何も出来ないわ。そうでしょう?」
本当に、信じきれる馬鹿。それも、自分の命綱までぽんと預けちまうような。
「・・・どうしようもない馬鹿だよな」
「あら、私は好きよ?いいじゃない、馬鹿でも。その分人生楽しいわ」
「・・・だな」
あいつは、微塵も疑わない。できるって。やってみれば、絶対にできるって。
それじゃあ、証明してやらなきゃなんねえじゃん。あいつの言ってることは本当だって。
だって俺は、アイツのパートナーなんだから。
遠くで、俺とリノを呼ぶ声がした。どんどん近くなる。きっと今も、あいつは馬鹿みたいに真っ直ぐに、こっちに向かってきているのだろう。
「行こう。フミちゃんが呼んでる」
「おお」
俺は立ち上がって、土を払った。きっとこれからも、骨が折れる旅になる。
馬鹿真っ直ぐな全力疾走。障害物なんて、全部吹き飛ばして、でこぼこ道突っ切って。
でもきっと、平坦な道よりは俺らの性には合っているのだろう。